高い天井の広い空間にぽつんと一つ受け付けがあった。
受付の女はぴしっとスーツを着こなし、きちんと髪を七三に分けて、端正な顔を少しもゆがめることなくそこに座っていた。
彼の後ろにあるブラウンの扉のエレベーターは金文字で第三級社員専用と書かれている。
時計の短い針が十八を指すと、機械的な音声のアナウンスが第三級以上の社員の勤務終了を告げた。アナウンスがなっている間に、チンと音がしてエレベーターの扉が開き、ぞろぞろと皆同じスーツを着た社員が出てきた。皆同じような白い顔を並べて大きな自動ドアから会社を出ていった。エレベーターは何度も往復して大量の社員を運んだ。
エレベーターから社員が出てこなくなると清掃機械が三台現れて、モップがけを行った。清掃機械は三度にわたって全体を掃除して隅の方の扉を開けて消えていった。
時計が二十四時を指した。
機械的な音声のアナウンスが入り、第五級社員の勤務時間終了を告げた。
隅の床が自動的に開いた。
それから三十分ほどすると、かつかつと階段を上る音がたくさん下から聞こえた。そこから青いつなぎを着た社員が疲れた顔でぞろぞろと現れた。第五級社員が帰ってしまうと、再び清掃機械が現れてモップがけをした。
時計は三十時を指した。
機械的な音声のアナウンスは第十級社員の勤務時間終了を告げた。
第十級社員は三十一時になったころに頭を出した。うつろな目を下に向けて全員無言で会社を去っていった。
時計は四十二時を指した。
アナウンスは最下級社員の勤務終了を告げた。
三時間たって、最下級社員が階段を上って現れた。表情の薄い青白い顔はどこを見ているのか分からず、その足元はおぼつかなかった。ぞろぞろと青白い顔の社員が床のしたからはいでてきて、一時間ほどすると最後の最下級社員が現れて、床が自動で閉まった。
最後の最下級社員は床から出てくると、途端に白目を向いて前のめりに倒れた。最下級社員はピクリとも動かず、その後現れた清掃機械にどこかへ引きずられてしまった。
清掃機械がすべて撤収したのは四十七時だった。
それから一時間後の零時に、アナウンスが入り受付係の勤務交代を告げた。すぐにビシッとスーツを着こなした端正な顔立ちの女社員が入社して、それまでいた受付係は自分の鞄を持って帰っていった。
受付係の勤務交代とほぼ同時に第三級以下の社員の勤務開始をアナウンスが告げた。
白い顔をした社員がぞろぞろと入社し、今日も仕事を始めた。
全社員が入社し終え、清掃機械が撤収すると、床の階段が閉まった。
ぽつんと一つある受付の女は、瞬き一つせず、端正な顔で一日を見守っていた。
アトガキ
螺旋って響きがいいですね。なんか怪しげな感じが。
それだけ。