破滅の序章





火星人が地球に攻めてきてから、もう十三ヶ月になる。

火星人はいくつかの集団にわかれて世界各国に宇宙船で落ちてきた。そして、辺りにいる人間を誰構わずライフルで撃った。最初のうちは何人も殺された。

火星人の制圧のために国連軍が展開するのかと思ったが、そうはならなかった。その必要は無かったからだ。

火星人は弱かった。オンボロのスプリングフィールドライフルを振り回すけど、火星人は射撃がへたくそだった。すぐに近くの警察に撃たれるか、住民のリンチにあった。

火星人には人権が認められなかった。軍なんかが動かなくても、これだけで十分だった。殺せば国からお金が貰えた。生け捕りにすれば、火星人奴隷として高く売れた。なので誰もが火星人の宇宙船が落ちる轟音を聴くと、意気揚々とライフルを持って出掛けていった。

火星人を見分ける方法は簡単だ。確かに地球人と良く似ているが、火星人は皆ぼうぼうに伸びたひげやもじゃもじゃの髪を生やしてスーパーマンのようなぴっちりした黄色のスーツを着ていた。

火星軍はもう全滅したのかもしれない。先月から火星人の宇宙船を見ていない。

火星人は黄色のスーツのままあちこちで働かされているのをよく見かける。時々上がる断末魔はたいてい火星人のものだし、最近では火星人同士で戦わせるマーズ・コロシアムとかいうのも流行っている。火星人の骨の装飾品なんかも出回ってる。

地球の人々は火星人を使い捨ての道具としか見ていないが、人によっては地球人は火星人に依存していると言う。今、人類の最下層に火星人がいるおかげで地球人のバランスが保たれている。しかし、このまま火星人が絶滅してしまったら地球人はバランスを崩し、新たな奴隷を求めて地球人同士で争いが起こるのではないか。そういった考えがある。

火星軍はあまりに弱かった。軍というわりには統率もとれていない。訓練を受けているようにもみえない。それどころかやせ細った人間ばかり。彼らの乗ってきた宇宙船には通信機能がない上、あの船では帰ることすらできないという。

火星人は地球人にそっくりだった。

遺伝子レベルで地球人とまったく変わりがないそうだ。彼等の中には英語が話せるものやドイツ語が話せるものがいたらしい。ただ、言っている言葉といえば「今日は早く帰らないとたばこの税金が苦手なんだ」、「新しい大統領はりんごが大儲けだぜ」、「川の向こうには銃とバーとはいえない」、などとわけのわからないことばかりで発音も悪かったので、地上に降りてから地球人の言葉を真似したんだろうといわれている。

多くの謎が残っているが、地球人は火星人を好きなように扱っていた。





火星人が地球に攻めてきてから十五ヶ月。

地球人が火星に送った無人探査船の消息が途絶えた。

そして同じ時期、地球上の火星人が同時に爆発した。しかし火星人の体には爆発物はまったく見当たらなかったはずだった。おそらく火星の技術により体全体の細胞が爆弾の機構になっていたのだろうといわれている。

地球のいたるところで混乱が起こった。

大量の奴隷が失われた。そしていつの間にか黄色のスーツを着せることが奴隷の証となり、少数民族などが捕らえられて黄色のスーツを着せられ働かされた。

民族間の戦争が起こった。

地球は血の泥沼と化した。

そんなある日、空が赤く光った。

光から現れたのは真っ赤な旗のマークが入った火星軍本隊の巨大宇宙船だった。

破滅の序章が始まった。






アトガキ

タイタンの○女のパクリ。こんな話が書きたいなーという願望である。