暗い森の中を一人の男が歩いていた。
男は初めて入る森に困惑しているようだった。このように地面からまっすぐ上に伸びる植物なんて見たことが無かったのだ。妙に甲高い生き物の声も頭上で飛び回る奇怪な生物もやわらかい地面も初めてのことばかりだった。
なので男は常に周囲を警戒しながら歩いているようだった。この森は視界も訊き難い上に障害物が多い。さらに強力な電波障害が発生しており、ところどころに多くの生物がいるので敵が襲ってきても対応できないようになっている。
ある植物が細い腕で道をふさいでいて、男はそれをまたいで通った。その時男は何か固いものを踏み潰したようだが、ちらりとそちらを見ただけでまったく動じずに歩く。白い砕けた何かがそこにあったようだ。
森は半径百三十キロメートルの半球に覆われていた。はるか上には照明やファン、巨大なロゴマークが見える。
方向感覚がしっかりしているようで男はまっすぐその中心部を目指していた。道中はたくさんの動物にじっと睨まれていたが、実際に襲ってきたのは暴走した防衛システムだけだった。どれも同じような顔をした青白いそれらを、男は手に持った拳銃だけで迎撃していった。ときおり共食いしているところも見かけた。互いを敵だとみなした防衛機械達が互いを破壊していた。一対一だとじっと静止していたが、多数対一になるとあっさりと勝負がついた。
男は中心部の制御塔にたどり着いた。
すると正面のぽっかり開いた穴から防衛機械が現れた。生産されたばかりのようで装甲がまだ白かった。どうやら防衛機械は男を敵とみなして現れたわけではないようだった。ただ生産されて、森を徘徊しに歩いて行った。
男はその塔のてっぺんにある球体に向けて拳銃を構えた。
拳銃はけたたましい音を鳴らした。空中を移動する生物が一斉に逃げ出した。
そして衝撃が走った。
凄まじい熱量で塔の上半分は吹き飛んだ。それでも収まらないエネルギーははるか上方の森を覆う半球を貫いて遠くのほうで爆発した。
防衛機械は全て中途半端な形で動かなくなった。徐々に内部の気温が下がって、環境の変わった生物達は息絶えていった。
いつしか森は腐敗して蔓状の植物に覆われた。
男はそんなことも知らず、森を出ていって果てしない旅を続けた。
アトガキ
ブラムっぽく。とくに意味は無い。