ある時間のある世界
とても美しい王妃がいました。
王妃はなんでも知っている魔法の鏡を持っていました。王妃は事あるたびに
「鏡よ鏡。この世で一番美しい者は?」
と鏡に訊き、
「あなた様です王妃様」
と鏡は答えました。
ある日のこと、王妃はいつものように鏡に訊きました。
「鏡よ鏡。この世で一番美しい者は?」
すると鏡はこう答えました。
「白雪姫です王妃様」
この答えに驚いて何度も訊き返しました。しかし鏡は
「白雪姫です王妃様」
としか言いませんでした。
「このおんぼろ!適当なことを言っていると、叩き割りますよ!」
とか言ってみたりしましたが、
「これは真実でございます王妃様」
と鏡は答えました。
鏡の言うことを信じた王妃は城の兵士に、白雪姫を殺してその肝を持ってくるよう命じました。城の兵士は3日3晩森を捜索し(森の中を探せと鏡に命じられた)白雪姫を発見しましたが、その雪のように白い肌、血のように赤い唇、黒檀のように黒い髪に見とれ、すっかり殺す気が失せてしまいました。兵士は代わりにイノシシを狩り、その肝を王妃に捧げました。
白雪姫を殺したと思い、満足した王妃は鏡に訊きました。
「鏡よ鏡。この世で一番美しい者は?」
鏡は答えました。
「白雪姫です王妃様」
意外な返答に王妃は驚きました。
「魔力が衰えてるの?今すぐ魔女に頼んで直してもらいましょうか」
と言ってみましたが、
「現在魔力はたっぷり残っています王妃様」
と鏡は答えました。
鏡の言うことを信じた王妃は自ら森の中に入り、3日3晩白雪姫を探し、白雪姫を発見しました。白雪姫を見つけると、後ろから忍び寄りロープで首を絞めました。城の暗殺部隊も驚くような手際でした。白雪姫の力が無くなるのを確認すると、嬉しそうに城へと帰りました。
白雪姫が窒息で倒れているところに、7人のドワーフがやってきました。
「女の人が倒れている!」
「早く助けよう!」
「体を仰向けに!」
「人工呼吸を!」
「心臓マッサージ!」
「1!2!3!4!5!・・・・」
「息を吹き返したぞ!」
まるでライフセーバーのような手際でドワーフ達は白雪姫を救出しました。意識が戻った白雪姫は7人のドワーフを見て言いました。
「なんて小汚いドワーフなのでしょう!私に触らないで!私は隣国の王女、白雪姫よ!」
白雪姫が走り去ったのを見て、ドワーフ達は
「あれだけ元気なら大丈夫だ」
「よかったよかった」
と安堵しました。
森の中から泥だらけになって城へ帰った王妃は、服も着替えず鏡に訊きました。
「鏡よ鏡。この世で一番美しい者は?」
鏡は答えました。
「白雪姫です王妃様」
この返答に驚いた王妃は、
「やっぱり一度溶解しましょうか?そうすれば直るかもしれませんね」
と言ってみましたが
「いえ、溶解してしまうと魔力が・・・。私は正常でございます」
と鏡は言いました。
鏡の言うことを信じた王妃はリンゴ売りに化けて森の中を3日3晩白雪姫を捜し歩きました。そして、とうとう白雪姫を見つけると声をかけました。
「もし、お嬢さん」
「なあに?おばさん」
と白雪姫は返しました。
「おば・・・いや、おいしいリンゴはいかがかな?」
とリンゴ売りに化けた王妃が言うと
「リンゴ!青森産の超高級リンゴ!?」
「あ、ああ・・・もちろんだよ(アオモリ・・・?何処だそれ?)」
「わーくださいください!」
白雪姫はリンゴを取ると、そのままかぶりつきました。
「わーおいしぃぃぃ・・・。」
すると、白雪姫は倒れてしまいました。白雪姫が食べたのは、王妃が用意した毒リンゴでした。
白雪姫を殺したと思った王妃は、飛び上がらんばかりに喜んで城へ帰りました。
白雪姫が毒で倒れているところへ、7人のドワーフがやってきました。ドワーフ達は倒れている白雪姫を見て驚きました。
「あのときの女の子だ!」
「倒れているぞ!」
「毒がまわってる!」
「息はあるぞ!」
「くそっ!回復しない!」
ドワーフ達は嘆き、白雪姫を家へ運びました。
その後、白雪姫は寝たきりとなり、ドワーフ達は一生懸命白雪姫の介護を続けました。
「鏡よ鏡。この世で一番美しい者は?」
王妃は鏡に尋ねました。鏡は答えました。
「7人のドワーフです王妃様」
白雪姫〜The beautiful dwarf〜 END